高館山は鶴岡市大山にある標高273.2mの山で、この一帯はブナをはじめとする落葉広葉樹の森です。雪解け直後、春を告げる植物たちが一斉に咲き始めると林床は華やかな森の楽園になります。
-話は少し遡りまして、3月31日のことです。-
「スプリングエフェメラルが咲き出したよ」
という友人からの情報を得て、翌日すぐに高館山に向かいました。
スプリングエフェメラルとは春先に花を、夏までに葉をつけると、
あとは地上から姿を消して地下で過ごす草花の総称です。
直訳すると「春のはかないもの」「春の短い命」という意味で
「春の妖精」とも呼ばれています。
今回は高館山で出会った妖精達のほんの一部をご紹介します。
<カタクリ>
開花期 4~6月
ユリ科カタクリ属
古語では堅香子(かたかご)と呼ばれていたとされています。
今でも山形県西村山郡でカタガッコと呼ばれているのは、その名残りなのでしょう。
<キクザキイチゲ(菊咲一華)>
花期 3~5月
キンポウゲ科イチリンソウ属
色は白、ピンク、紫の三色があります。
筆者が子供の頃は”デデッポポの花”と呼んでいました。
この花が咲く頃から鳴き始める山鳩は
「デデ-ッ ポポーッ」
と鳴くのですが、何か関連があるのでしょうか。
<マンサク(万作)>
マンサク科
開花期は1月中旬から3月末頃までです。
春に他の花に先がけて”まず咲く”ということで
だんだん”まんさく”になって行ったとされています。
また、花がたくさん付くので
「豊年満作」から命名されたとも言われています。
<オオミスミソウ(大三角草)>
サクラソウ科サクラソウ属
別名 ユキワリソウ(雪割草)
花期 3~4月
白、ピンク、紫、
そして一重咲き、八重咲きなど様々な品種があり
とても可憐な花をつけます。
ユキワリソウは新潟県の県花にも選ばれています。
新潟市の角田山や燕市の国上山に
自生するユキワリソウの大群落は圧巻!(←だそうですよ)
<ショウジョウバカマ(猩々袴)>
メランチウム科ショウジョウバカマ属
花期 低山3~4月 高山6~7月
北海道から九州まで広く分布しています。
名前の由来の”猩々”とは中国の伝説上の赤い動物のことで、
それをこの赤い花になぞらえているそうです。
どう見ても赤と言うよりピンクですが、まあいいでしょう。
また”袴”は葉の重なりが袴に似ていることから名付けられたとされています。
<オトメエンゴサク(乙女延胡索)>
ケシ科ケマン属
開花時期 4月~5月
以前は”エゾエンゴサク”と呼ばれていましたが、
北海道に分布するものとは別種ということが分かり
2009年に、本州に分布するものは
”オトメエンゴサク”と学名が見直されました。
清々しい青色の他に白っぽい花があります。
<エンレイソウ(延齢草)>
ユリ科エンレイソウ属
花期は4月から6月
綺麗とは言い難いですが、珍しいから人気という花ですね。
漢方薬にも使われるそうですが、毒性があるので素人は止めた方がいいです。
・・・と言うか、この山一帯の植物は採取禁止ですからご注意を!
<イワウチワ(岩団扇)>
イワウメ科イワウチワ属
ピンクの小花とツヤのある丸い葉っぱが特徴的です。
こんなのもありました~(汗)
ミミズが大量にぶら下がっているようにしか見えないでしょうが、
れっきとした花です。
実物は写真ほど気持ち悪くないです(笑)
<ハンノキ>
カバノキ科ハンノキ属
<ヤマザクラ>
バラ科サクラ属
山でこの桜を見つけた時は気分が上がりました。
近くを歩いているハイカー達も同様のようで、
歓声を上げながらしきりにシャッターを切っていました。
やはり日本人にとって、桜は格別な花です。
高館山を訪れてから既に半月以上が経ちました。
里ではソメイヨシノが今を盛りに咲き誇っています。
春の深まりと共に、木々の表情は刻一刻と変わっているでしょう。
山ではそろそろブナの新緑が芽吹く頃でしょうか。
また次の季節にゆっくり歩きたい山道です。